現代西洋経済史
(東京大学経済学部 2004年度冬学期 月U・木V)
1.講義の概要・目的
19世紀末から1980年代にいたる欧米社会経済史を、諸国・地域間の対立・摩擦の側面と、経済統合に向かう側面とに注目しながら概観する。この講義では上の1世紀ほどの期間をいくつかの時期に区分して、各期の@世界システム(通貨・金融、資本移動、貿易・海運、人口移動、外交・軍事など)の特質、A各国・地域の内的条件(殊に労使関係、農業、失業・貧困問題)を概説したうえで、B国内問題が国際問題に、また国際問題が国内問題に転化する様相を明らかにして、Cそれらを解決・回避する方策がどのように模索されてきたかを論ずる。おもに欧米を対象とするが、必要に応じて日本など非欧米地域にも論及する。
講義ではおよそ以下のようなテーマを論じる。
T 導入
1 課題と方法
2 19〜20世紀という時代
U パクス・ブリタニカの世界 −"nation-"の形成−
1 インダストリアリズム
2 「国民国家」・「国民経済」の言説
3 市場統合への動きと対立 −「自由貿易」体制−
V 19世紀末の変化と第1次世界大戦 −"nation-"の制約−
1 世界システムの変化 −「大不況」−
2 「国益」の論理転換 −保護主義・関税戦争−
3 世界市場と植民地
4 破局と組織化の経験 −第1次世界大戦−
W 戦間期と第2次世界大戦
1 もう一つの組織化 −社会主義−
2 逆行 −ヴェルサイユ体制−
3 戦時の経験の不可逆性 −1920年代−
4 世界経済の性格変化と大恐慌
5 再び組織化 −1930年代−
6 再び破局 −第2次世界大戦−
X 戦後秩序の形成と動揺
1 戦後構想と戦後
2 冷戦と福祉国家
3 再建と改革
4 国際調整の仕組み
5 ヨーロッパ共同体
6 動揺
7 再編
Y 結語
2 教科書
なし。ただし、以下の4冊を教科書に準ずる参考文献として予め挙げておく。
藤瀬浩司『資本主義世界の成立』(ミネルヴァ書房)
原輝史・工藤章編『現代ヨーロッパ経済史』(有斐閣)
H.ケルブレ『ひとつのヨーロッパへの道 −その社会史的考察−』(日本経済評論社)
永岑三千輝・廣田功編『ヨーロッパ統合の社会史』(日本経済評論社)
3 参考文献
開講時に参考文献リストを配布するほか、講義の進行に応じて随時紹介する。