就業規則改正案・労使協定についての考え


 ここには、法人側から提案されている就業規則変更案と、労使協定(三六協定、専門業務型裁量労働制、高齢者再雇用など)についての、過半数代表団の考えを、必要な情報とともに記載するつもりですが、法人側との協議や代表団の会議に忙殺されており、事態もめまぐるしく動いているため、ほとんど工事中です。

 そこで、わたくしどもが最も重視していることについて、以下4点のみ、それも簡略に記します。これ以外にも、入試手当、病休者の扱い、非常勤職員の法定外検診、特定有期雇用教職員の職名変更など、大事なことはたくさんあるのですが、近日中にそれらも記載するようにいたします、悪しからず。(2008年3月14日)

  1.教育研究連携手当について
 東京大学は平成16年度から、本郷、駒場、柏の三キャンパスを三極として一体のものとして扱うようになっています。この「三極構想」は、柏キャンパスに働く者も教育研究連携手当では本郷・駒場と同等にすることにより、一体性と円滑な移動を担保してきたのです。
 柏が一体であることはそれ以降、当然の前提(東京大学の大原則)であり、昨年の過半数代表団との協議もこの前提のうえになされました。昨年は、この三極の一体性のうえにさらに、演習林や火山センターなど全国各地の機関で働く教職員にも三極と同等の教育研究連携手当を保証することとし、国の地域手当の特別区(本郷・駒場はこれに該当)支給割合よりも若干低い数字を全学一律に適用することで必要な原資をまかなうこととなったのです。昨年度の労使協議では、平成20年度の教育研究連携手当の支給率としては15.6%程度が示されていました。
 ところが、今年の労使協議では、法人側は、15.0%という信じられない数字を提案しています。国の特別区地域手当と比べるなら1.0%の差が発生することになります。しかも、そこで法人側が示しているのは、三極構造という東京大学の原則以前に後退した理由付けでしかありません。すなわち、国の地域手当支給水準を根拠とするなら、柏は6.0%であって、これをもとに全学一律の支給率を算出するなら14.95434%にしかならないというのです。
 このように、今回の説明は昨年度とは異なる論理でなされており、しかも三極一体の原則からも後退しており、到底首肯できるものではありません。また、こうした算出方法で行くなら、平成23年度には17.5%を実現し、国との格差は0.5%にするとの目標がどのように実現できるのか不安を覚えざるをえません。
 これは、東京大学の原則に関わりますし、また教職員の給与水準にも直接響く問題ですので、本郷事業場過半数代表団としては特に重視して取り組みたいと考えています。(2008年3月14日)

  2.超過勤務、メンタル・ヘルス、男女共同参画、育児・介護、その他ワーク・ライフ・バランスに関連して
 超過勤務、殊に恒常的な超過勤務の問題は、決してはかばかしく改善されているわけではありません。超過勤務の目標上限を超えさせないために、部署によっては「努力目標時間」を超えた超過勤務それ自体を記録させないといったゆがんだ対応もとられているとの報告もなされています。
 この超勤問題は直接的には仕事の量と人の数が適正に配分されていないという人事・労務管理の問題であり、ただちに具体的な実態把握を踏まえて、効果的な改善策を採用しなければならない問題です。
 しかし、超過勤務は、そこにとどまらず、教職員のメンタル・ヘルスなど健康問題に、また子の養育や家族の介護を行う教職員、妊娠中及び出産後の女性教職員等、仕事と生活の調和への配慮にかかわる非常に大きな問題でもあります。
 そこで、本郷事業場過半数代表団は、これら一連の問題群について調査を行ったうえで、その結果に基づいて適切かつ必要な措置を提案する機関として、法人側から昨年度出されていた「勤務時間等設定改善に関する懇談会」案を受けて、「労働時間等設定改善に関する委員会」の設置を提案しています。総長および各事業上の過半数代表者が指名する委員と産業医・男女共同参画室など若干の専門家を加えて、集中的に調査と審議を行い、今秋に第1次の改善案を示すことを目指しています。
 このような委員会を設置すると、過半数代表団はさらに忙しく、任務が重くなるのですが、超過勤務とそれに関連する問題群はすでに放置できる限界をはるかに超えていると判断されるために、こうした提案にいたりました。(2008年3月14日)
 この委員会については、「ワーク・ライフ・バランス検討会」という名称で法人側との間で合意に達しています。4月中には発足し、調査と審議を開始する予定です。また、この検討会の行程表が2008年10月に第1次改善案を総長に報告することになっておりますので、時間外勤務及び休日勤務に関する協定は、検討会の審議結果と改善方向を反映させることができるよう2008年11月30日までの8ヶ月時限協定とすることを提案しています。(3月25日)

  3.短時間・有期雇用職員の処遇、雇い止め問題、高齢者再雇用などに関連して
 東京大学にはきわめて多くの非常勤職員がいます。形式的には、非常勤職員は「臨時的で、補助的な業務」のために雇われることになっていますが、実態は必ずしもそうではなく、実に多様です。長期にわたる定削や人件費削減の結果、恒常的で基幹的な業務にも多くの非常勤職員が就いています。非常勤職員が仮に一斉にいなくなったなら、東京大学のどの部署もただちに機能麻痺の状態に陥るでしょう。
 しかし、これら短時間・有期雇用職員の処遇については従来からさまざまな問題と不満が指摘されてきました。さらに法人化後に雇用された方々は「更新4回、最長5年」の雇い止めの期限が平成20年度末から発生します。本人は働きたくても雇用は打ち切りになり、職場の方でも彼らの仕事に支えられていたにもかかわらず未経験な方を新たに雇用しなければなりません。その結果、常勤教職員の負担が増え、超勤が増え、人件費も(常勤の超勤は高く付くがゆえに)増える危険性が待ちかまえています。
 定年後、年金受給年齢までの雇用を確保すべきことは日本社会の共通了解になっています。また、長い間、学内のさまざまな部署を経験されてきた方の能力や見識を活かすことの意義も学内では共通の理解があるといってよいでしょう。しかし、東京大学の高齢者再雇用制度は非常勤の、それも決して良好とはいえない処遇しか与えることができません。
 こうした一群の問題を解決しなければ、東京大学職員の本当の力は発揮できませんし、雇い止めのように待ったなしの状況に来てしまっている問題もあります。
 そこで、本郷事業場過半数代表団は、これら一連の問題群について調査を行ったうえで、その結果に基づいて適切かつ必要な措置を提案する機関として、「短時間・有期雇用職員等処遇改善委員会」の設置を提案しています。(2008年3月14日)
 この委員会については、「短時間・有期雇用職員等処遇改善検討会」という名称で法人側との間で合意に達しています。4月中には発足し、調査と審議を開始する予定です。この検討会も10月を目途に第1次改善案を策定することになっており、2008年度中の遅くならない時期には解決を求められている雇い止め問題などの方向性を示すこととされました。したがって、「高年齢者の再雇用対象者に係わる基準に関する協定」も、その成果を反映させるために、当面は2008年11月30日までの8ヶ月時限協定とし、12月1日以降あらためて4ヶ月の協定を締結することを予定しています。当面の協定は法人側の提案の線で11月30日までの時限で締結しました。(3月26日)

 雇い止め問題についてはこちらに移設しました(2009年2月23日)。


  4.専門業務型裁量労働制に関する協定について
 助教、特任助教、および特任研究員などおもに若手の研究者がそれぞれの研究室・職場において、教授・准教授などの具体的な指示の下に時間的に拘束された業務に従事している現実に鑑み、裁量労働制の名の下に指揮命令下の業務が肥大化する事態(裁量労働制の濫用状態)を防止することが必要と考えます。
そのために、代表団は、この協定に、(1)助教・特任助教・特任研究員へ裁量労働制を適用した契約を結ぶ際は事前に本人の同意を得ることを要件とすること、(2)部局長は、これら助教・特任助教・特任研究員の業務遂行を監督するものに対して、裁量労働制の趣旨(殊に協定第3条の内容)を説明し、協定の履行について責任を負うことを、協定に含ませるべきであると提案しました。
法人側との協議の結果、人事労務担当の辰野理事が、平成20年4月8日科所長会議において、以下3点について説明を行い、周知徹底を図る旨の確認書を代表団に手交するとの条件で、法人側提案通りの協定を締結しました。(3月26日)
 1.助教、特任助教及び特任研究員の専門業務型裁量労働制の適用に当たっては、本人の同意を得ること。
  2.部局長は、「1.」の職の裁量労働従事者の業務遂行を監督するものに対し、専門業務型裁量労働制に関する協定第3条に定める裁量の範囲について説明すること。
  3.部局長は、専門業務型裁量労働制に関する協定の部局内の適正な履行に責任を持つこと。


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