お知らせ
ファミリーイベント ~国立天文台見学会(第10回)~
2018年12月27日
毎年の恒例行事であるEMPファミリーイベント「国立天文台(東京都三鷹市)見学」が今年も12月23日に開催されました。2009年に始めたこのイベントも今年で10回目を迎え、45名(大人25名、子供20名)が参加しました。
国立天文台は、世界最先端の観測施設を擁する日本の天文学のナショナルセンターです。大学共同利用機関として、また、国際協力の窓口として、宇宙の観測・研究・開発を広く推進したり、天文学および関連分野の発展のために活動しています。
緑が多く、静かな構内には、旧石器時代から近世までの複合遺跡もあり、国立天文台の前身である東京天文台の面影を残す大正期の建物も点在しています。参加者は2班に分かれて、それらの建物などを見学しました。
最初に国立天文台三鷹の中で現存最古の建物で、国の登録有形文化財にも指定されている第一赤道儀室を見学しました。第一赤道儀室は大正10年(1921年)に建てられ、ドーム内にある口径20cmの望遠鏡は、昭和14年(1939年)から60年間、太陽黒点のスケッチ観測に活躍したそうです。
第一赤道儀室を見学した後、太陽から土星までの距離を140億分の1に縮めて100メートルにした「太陽系ウォーキング」を歩きながら、天文台歴史館に向かいました。惑星パネルには惑星の14億分の1の模型がついていて、太陽の模型から歩いていくと、水星・金星・地球・火星・木星・土星の模型が展示されおり、惑星までの距離やその大きさを体感しながら、太陽系を“体感”することができます。1メートルの太陽と比べると 地球の大きさは豆粒大ほどで、太陽の大きさ、太陽系の広大さを改めて実感することができました。
そして、天文台歴史館(大赤道儀室)を見学しました。天文台歴史館(大赤道儀室)も国の登録有形文化財に指定されており、地面からの高さ19.5メートル、ドーム直径が14.5メートルもある巨大な建築物です。建設当時、半球ドームを作る技術が施工業者になく、船底を作る技術を持った造船技師の力を借りて作られたそうです。ドーム内にある口径65センチメートル屈折望遠鏡は、日本最大の口径だそうです。このドームには国立天文台が所有している貴重な資料も展示されており、天文・天体観測の歴史について学ぶことができます。
その後、天体や天体現象を空間3次元と時間1次元の4次元で可視化するために開発された、4次元可視化実験システム「4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uドームシアター)」で、最新の宇宙の姿の立体ムービーを鑑賞しました。 地球から宇宙の果てまでの莫大なスケールを自由に移動しながら、天文学の最新の観測データや理論モデルによって描き出された宇宙の姿や、天文学者たちが行っている最新のコンピュータシミュレーションを映像化した迫力あるムービーなどを通じて、最新の天文学の世界を文字通り「目のあたり」にするような体験ができました。
講義室に戻ると、サンタさんからのクリスマスプレゼントが待っていました。思いがけないプレゼントに子供たちは大喜びでした。
最後に、国立天文台名誉教授、TMT国際天文台評議員会副議長兼日本代表の家正則先生より「次世代超大型望遠鏡TMT計画ーそのサイエンスとマネージメント」のお話がありました。TMT(Thirty Meter Telescope:30メートル望遠鏡)プロジェクトとは、口径30メートルという現在活躍しているすばる望遠鏡の10倍以上の面積の主鏡を持つ史上最大の地上望遠鏡計画です。建設地はハワイ・マウナケア山の山頂(標高4200メートル)。日本、米国、カナダ、中国、インドの国際協力によって2014年度に建設をスタートして、2027年度の完成を目指しています。この大きな鏡により、これまでの8メートル級の望遠鏡と比べ、解像力は約4倍、光を集める能力は10倍以上になるそうで、この高い解像度と集光力で太陽系外惑星の探査や宇宙初期の天体の成り立ちの解明など、新しい天文学の研究分野を切り拓くそうです。
難しいお話を小学生でもわかるようにお話いただき、参加者からは日本がすごい望遠鏡を作っていて成果を上げていることを初めて知ると同時に、壮大な宇宙の謎にここまでせまっていることに感動した、という声が聞かれました。
今回の見学会では、家族といっしょに豊かな自然の中で歴史ある建物や貴重な観測施設を見学し、宇宙への想いを馳せ、家族への素晴らしいクリスマス・サービス・デーとなったことでしょう。