お知らせ

プログラムレポート ~農学デー(第5期)~

2010年11月15日

緑に囲まれた弥生キャンパス
セイホクギャラリーでの講義

第5期プログラム最初のキャンパス見学として、「農学デー」の催しが10月29日、弥生キャンパスで実施されました。ありのままの自然現象を観察する「フィールドトライアル」で、大学構内の植物病害を調べた後、研究室や植物病院を訪ねて、農学に対する理解を深めました。

午前9時、受講生は弥生キャンパス内のセイホクギャラリーに集合。最初に農学生命科学研究科の難波成任教授による「植物の健康」の講義がありました。食糧の生産性向上には農薬使用が不可避なことや、プラス面ばかりが強調されがちな「有機栽培・無農薬栽培・減農薬栽培」の問題点、持続可能な食糧生産に関する諸課題について、解説を受けました。



講義の後、受講生は4つの班に分かれて、フィールドトライアルに向かいました。弥生キャンパスの広い敷地で、病害に侵された植物を見つけては、診断体験用サンプルを次々に採取。構内の「植物病院」に持ち込み、病害の診断にあたりました。サンプルをカミソリで切り刻み、プレパラートにセット。顕微鏡で見た画像を事典・図鑑の写真や図と照合しながら、病原体を特定していきました。 診断の対象となった病害は、シャガ(アヤメ科)のさび斑病、エノキ(ニレ科)の裏うどんこ病、エノキのうどんこ病、ヒノキ(ヒノキ科)のペスタロチア病、フッキソウ(ツゲ科)の紅粒茎枯病、ツバキ(ツバキ科)のツバキクロホシカイガラムシなど。4つの班はそれぞれ診断の経緯も含め突き止めた病害名を発表。診断結果は、すべての班で「正解」でした。

屋外でのフィールドトライアル
屋外でのフィールドトライアル
植物病院で病害の診断
植物病院で病害の診断
顕微鏡で見たシャガさび斑病の分生子
顕微鏡で見たシャガさび斑病の分生子


午後は研究室の見学でした。植物病理学研究室・植物医科学研究室では、難波教授、大島研郎准教授の下で学んでいる大学院生や学部生から、研究内容や植物病院の役割について説明を受けました。 ゲノムを解読するDNA塩基配列自動解析装置や、植物や微生物の遺伝子操作に使う機器について説明を受け、一部実際に使用し実験を体験しました。また、ウイルス診断も体験。検査キット(イムノストリップ)を使って、ウイルス感染の有無を確認したり、電子顕微鏡で、実際にウイルス粒子を観察し、10万倍の世界をのぞきました。 「光る植物」も見ました。仕組みは、こうです。まず、ウイルスに蛍光物質をつくる遺伝子を組み込み、そのウイルスを植物に感染させます。ウイルスに感染した部分は、暗がりで紫外線を当てると、蛍光色に光ります。研究室で見た植物は、茎や葉脈に沿って発色しており、感染の広がり方がよく分かりました。

水族生理学研究室では、金子豊二教授から「魚類の浸透圧調節--海の魚と川の魚」の説明を受けました。魚には淡水、または海水の中でしか生きられないものもあれば、淡水と海水を行き来できる魚もいます。そのカギは、魚類のえらにある塩類細胞が握っています。金魚などの淡水魚は、塩類細胞が淡水中の塩分を積極的に体内に取り込み、トラフグなどの海水魚は、塩類細胞が水中へ塩分を排出して、体内の塩分濃度を一定に保っています。淡水と海水を行き来する広塩性魚の塩類細胞は、塩分の取り込みと排出の両方の機能を持っています。

金子教授の説明の後、ウナギやティラピアなどの水槽を見学しました。 海水魚と淡水魚が同じ水槽の中で生きられる塩分濃度は、だいたい20~35%の範囲ということが分かっています。研究室では、そのような濃度に調節された水槽で、金魚と熱帯魚が仲良く泳いでいました。

受講生は、豊富なプログラムをこなして、農学デーの一日を終えました。

同じ水槽で泳ぐ淡水魚の金魚と海水魚の熱帯魚
同じ水槽で泳ぐ淡水魚の金魚と海水魚の熱帯魚
大学構内で飼われているウナギ
大学構内で飼われているウナギ


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