お知らせ
プログラムレポート ~川口 淳一郎氏、はやぶさを語る~
2011年2月28日
第5期EMPでは、2月26日に独立行政法人宇宙航空研究開発機構JAXA(ジャクサ)の川口淳一郎教授にお越しいただき、「7年間のはやぶさの旅物語」というタイトルで特別講義を開催いたしました。川口先生は、2010年に大きな話題となった小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャです。この特別講義はEMPの修了生にも開放され、多くの方の熱気に包まれた講義となりました。
2010年6月13日の地球帰還時に大きな話題となった「はやぶさ」ですが、そもそもこのミッションはなにを目指したものだったのでしょうか。川口先生は、土星の衛星エンセラドゥスを例に、生命の起源の追求が小惑星探査の背景にあることを説明されました。小惑星探査の着想を得てから、「はやぶさ」ミッションとして実現するまでの苦労についても、さまざまなエピソードを交えながら語っていただきました。
2003年に「はやぶさ」が地球を飛び立った後も、多くの困難がチームに立ちはだかります。考えられる全てのことは行い、あとは天命を待つ…そんなことの連続であったと、川口先生は語られました。打ちのめされそうな厳しい状況の中でも、モチベーションを落とさず、帰還を信じて打てる手は全て打つという話は、マネジメント経験のある受講生らにとっても共感するところが多く、とても感動的な講義だったようです。
「はやぶさ」に人格を感じたという話も、大変印象的でした。はやぶさが満身創痍となって地球に帰還する中、途絶え途絶えの通信を通じてのはやぶさとのやりとりに、初めてはやぶさへの感情移入が起きたそうです。これは、川口先生が長年関わってきた宇宙探査機の中でも特別な経験であったようです。
講義では、私たちは宇宙開発をどのように考えていくべきなのかについてもお話しがありました。宇宙環境を利用するという観点からは、失敗しないように着実な既存技術でしかも安価にプロジェクトを作ることが優先されます。しかしそれだけやっていては、必ず先細りになります。常に世界初を目指しながら、きちんと自分たちが新たな技術を開発して行くことが重要だという先生のご意見に受講生は耳を傾けていました。
最後に行われた質疑応答でも、活発に出される質問に対して一つひとつ丁寧に答えていただき、大満足で終わった105分でありました。