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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第8期)~

2012年12月20日

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景

12月14日、東京大学主要キャンパスのひとつで、2000年に新しい学問領域の創造を目指して建設された柏キャンパスの施設見学を行いました。
そこで行われている様々な新しい取り組みや最先端分野の研究活動の実際に触れ、柏キャンパスが目指す「学融合」「知の冒険」「国際キャンパス」の現場を体験しました。

見学に先立ち、物性研究所所長の家 泰弘教授から、「物理学的自然観の形成」の講義と「柏キャンパスの概要」についての説明があり、物性研究所の屋上からキャンパス全体および周辺の概観を俯瞰しました。
都心から至近にも関わらず、自然の残る広々としたキャンパスは、都心のキャンパスとはまた違った魅力があることを実感しました。

次に、低温・多重極限実験棟の低温液化室等を見学し、家教授から説明を受けました。低温液化室では、研究に必要な液体ヘリウムの生産・供給していますが、その年間供給量は20万リットルを越え、国内外の同様の研究施設の中でも1、2を争うほどの多さということです。このことからもここでの研究規模の大きさがうかがえました。

その後は2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、嶽山正二郎教授から簡単な説明を受けた後、実験施設に移動して見学を行いました。
嶽山教授、松田康弘准教授の案内で見学した破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置は、巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、600~700テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。
こうした磁場を生成するためには大量の電力が必要であり、その発電・供給も研究施設内で行っているということで、金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、世界最大の発電能力を有する直流発電機としてギネスブックにも登録されているフライホイール付き直流発電機を見学しました。
超強磁場を発生させることで、超強磁場でのみ現れる未知の現象の発現・発見を夢見て研究に取り組み、他では、そのような研究ができないという言葉が印象的でした。

家教授による講義
家教授による講義
フライホイール型直流発電機の解説をする金道浩一教授
フライホイール型直流発電機の
解説をする金道浩一教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする嶽山教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の
解説をする嶽山教授(右)


先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。小林洋平准教授の研究室では、レーザーを自由に設計し開発することにより、今までになかった新しい分光法を開拓しており、小林准教授の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。
また、板谷治郎准教授の研究室では、高強度超短パルスレーザーを用いた超高速物理現象に関する研究を行っており、板谷准教授の案内により、「高次高調波」とよばれるコヒーレント短波長光の発生装置などの実験装置群の見学をしました。

レーザーについて解説をする小林准教授
レーザーについて解説をする小林准教授
コヒーレントXUV光励起光電子分光
コヒーレントXUV光
励起光電子分光
実験装置について解説する板谷准教授
実験装置について解説する板谷准教授


昼食会の後、大気海洋研究所では、所長の新野宏教授から大気海洋研究所の概要の説明がありました。
見学に先立ち、海洋生命科学部門 兵藤 晋准教授から サメやエイなどの軟骨魚類について、海洋化学部門 小畑 元准教授からは、海洋観測研究の概要についてのミニレクチャーがありました。
ミニレクチャーのあとは、2班に分かれて、兵藤准教授の案内でトラザメ、ドチザメ、ティラピア等のたくさんの水槽が並ぶ飼育実験施設の見学や電子顕微鏡等でサメの鱗(サメ肌)を拡大して見ました。
次に、小畑准教授の案内で、屋外にある海洋観測機器棟で、海水の採水器や深海生物を採集する網等の海洋観測に使用する様々な機器を見学しました。

飼育実験水槽で飼育されているドチザメ
飼育実験水槽で飼育されているドチザメ
飼育実験水槽の説明をする兵藤准教授
飼育実験水槽の説明をする
兵藤准教授
海洋観測機器の説明をする小畑准教授
海洋観測機器の説明をする小畑准教授


以上の研究施設見学を行った後、最後に、物性研究所 新物質科学研究部門の森 初果教授より「有機分子を組み立てて(超)伝導体や磁性体をつくる」の講義がありました。難解な内容をレゴブロックの例えなどを用いるなど、分かりやすく噛み砕いた説明により、分子化合物をより身近な物として受け止めることができました。

今回の柏キャンパス見学会では、世界でも一、二を競うような高精度の実験環境が整えられた広いキャンパス、そしてそれらを駆使し、知の最前線に立って、前人未踏の最先端の研究に取り組む研究者の熱気を直に触れることができ、大変貴重な経験となりました。

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