お知らせ
プログラムレポート ~農学デー(第10期)~
2013年11月5日
第10期EMPでは、2013年10月25日に農学生命科学研究科がある弥生キャンパスで「農学デー」を実施しました。午前中は二つの研究室を見学しました。
動物医療センターでは、農学生命科学研究科獣医臨床病理学研究室の松木直章教授より「ペットの老年性疾患とその高度画像診断」についてのミニレクチャーを受けた後、診察室や手術室をはじめ、超音波診断装置、X線診断装置、CT、MRI等の画像診断設備などをひとつひとつ丁寧に案内していただきました。高度な疾病を治療するための「二次病院」として設立されたセンターで、多くの医療スタッフの皆さんが忙しく働かれる現場は緊張感があり、動物医療の最前線を垣間見ることができました。
難波成任教授が研究リーダーを務める植物病理学研究室・植物医科学研究室では、研究室で開発され、現在国内に発生し、問題となっているプラム・ポックス・ウイルス(PPV)の全国調査等に利用されているPPVウイルス検出キットを使い、イムノクロマト法とLAMP法で植物からウイルス を検出する実験を体験しました。
その後は、電子顕微鏡で実際に植物ナノ病原体を観察したり、ゲノム解読用の全自動DNA解析装置や植物・微生物の遺伝子操作用の機器の説明を受けました。 極めて微量の DNA サンプルから特定の DNA 断片を短時間に大量に増幅することができるPCR法の実験では、ピペットを使ってDNA試料を電気泳動用のゲルに注入するという体験をしました。
また、光るウイルスを利用してウイルス抵抗性を可視化した実験では、暗くした部屋で植物に紫外線を照射し、光るウイルスに感染した植物と、増殖が阻止され全く光らない抵抗性遺伝子を持った植物の違いを観察しました。感染植物は茎や葉脈に沿って蛍光を発しており、感染の広がり方が手に取るようによく分かりました。
さらに、昼食を交えながら、研究室の学生や若手研究者たちから現在取り組んでいる研究の様子などを聞き、彼らの研究に対する情熱に感銘を受けました。
午後は、難波教授から「植物の健康」と題した講義を受けて、植物病理学・植物医科学を概観し、その知識をもとにキャンパス内の植物の病害発生の調査を目的にフィールドトライアルへと出発し ました。受講生は4つのグループに分かれて、弥生キャンパスの広い敷地内で、グループ毎にそれぞれ異なる植物病に罹患したと思われる植物を採取し、構内の 「植物病院」に持ち込んで、研究員らの指導のもと、植物病の正体を探りました。生物顕微鏡を使って病変部分に感染している病原菌を観察し、植物病の図鑑と照らし合わせながら、チー ムで議論、診断、発表し、植物医師の仕事を体験しました。
受講生からは、「植物の病気」という概念と実態に触れ、こんなにも身近に植物の病気が蔓延していることを知り、ショックを受けたという声が多く聞かれました。それと同時に、マスコミ報道などを鵜呑みにするのではなく、サイエンスリテラシーを高め、正しい知識を得ることが重要であるということを再認識しました。
また、植物病理学研究室および動物医療センターの研究や取り組みが実社会にどれだけ重要な役割を担っているかについて認識し、当該分野についての興味、関心が非常に高まったという感想もありました。
研究室での実験や観察、フィールドトライアルという、普段とは違ったアプローチで体感することによって、気づきや理解が進む大変有意義な一日となりました。