お知らせ

プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第12期)~

2014年11月27日

EMP第12期では、11月21日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所の家泰弘教授から、柏キャンパスの概要についてお話しいただきました。従来の枠組みには入らない先進的な研究系も多く集まる柏キャンパスには、本郷キャンパスなど他のキャンパスと違った魅力があることがわかりました。その後、「磁石、磁力、磁場」についてのミニレクチャーがあり、休み時間にはその実演もありました。

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
家教授によるミニレクチャー
家教授によるミニレクチャー
家教授による超伝導の実演
家教授による超伝導の実演

続いて、Amir Babak Aazami特任研究員らの案内で、カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の施設を見学しました。IPMUは世界から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
研究者間での活発な議論が行われることを狙い、入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジやテラスなど、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。
ラウンジでは、ちょうどIPMUを訪れていた、世界的に有名な超弦理論の物理学者で、今年「京都賞」を受賞したエドワード・ウィッテン氏(プリンストン高等研究所教授)が熱心にディスカッションされている様子が見られました。

以上の施設見学を行った後、物性研究所に戻り、大気海洋研究所の羽角博康教授から「気候変動と海洋」と題して講義をしていただきました。受講生からは、海洋の温暖化への関わり方、特に熱塩循環について実験の困難性のほか、温暖化により循環が止まるというしくみが理解できたとの声が聞かれました。

カブリIPMUの建物の屋上
カブリIPMUの建物
広々としたIPMUラウンジ
広々としたIPMUラウンジ
「気候変動と海洋」を講義する羽角教授
「気候変動と海洋」を講義する羽角教授

昼食の後は2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、嶽山正二郎教授、松田康弘准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。

金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の87.7テスラという記録を樹立しているそうです。

電磁濃縮法の解説をする嶽山教授
電磁濃縮法の解説をする嶽山教授
「金道マグネット」の解説をする金道教授
「金道マグネット」の解説をする金道教授
フライホイールを説明する徳永准教授
フライホイールを説明する徳永准教授

極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
末元 徹 教授の研究室では、極限的な超高速現象を追及すると同時に、幅広い物質群に新しい超高速分光法を適用することを目標に、波長可変光源、低温測定、磁場下測定、顕微測定装置などが整備されています。最近のレーザー技術の進歩に伴って、様々の光源が開発され、10-14秒オーダーの超短時間の世界が研究できるようになってきたそうです。末元教授から「超短パルスレーザーによるテラヘルツ波の発生と利用」のお話をうかがいながら、装置の見学をしました。
近藤 猛准教授の研究室では、極限レーザーを励起光源とする超高分解能角度分解光電子分光装置の開発および角度分解・スピン分解・時間分解光電子分光で見る超伝導やトポロジカル量子相、放射光を利用した光電子分光で研究する強相関電子系物理について研究しています。近藤准教授の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。

テラヘルツ波の発生と利用について説明する末元教授
テラヘルツ波の発生と利用について説明する末元教授
実験装置について解説する近藤准教授
実験装置について解説する近藤准教授(左から3人目)


その後、広いキャンパス内を横断してキャンパスの最西端にある大気海洋研究所の見学をしました。同研究所は2010年4月1日、海洋研究所と気候システム研究センターが統合して、新しい名前でスタートしました。気候システム、海洋地球システム、海洋生命システムの三つの研究系と研究連携領域、三つの研究センターがあります。
見学に先立ち、所長の新野宏教授から研究所の概要説明、海洋生命科学部門 兵藤 晋准教授から サケの生態について、海洋化学部門 小畑 元准教授からは、海洋観測研究の概要についてのミニレクチャーがありました。
ミニレクチャーのあとは、2班に分かれて、兵藤准教授の案内で飼育実験施設の見学を行いました。ふ化しかかっているトラザメの卵、シロサケ、ウナギなど、貴重な飼育魚類の水槽が所せましと並んでいました。
次に、小畑准教授の案内で、屋外にある海洋観測機器棟で、海水の採水器や深海生物を採集する網等の海洋観測に使用する様々な機器を見学しました。

大気海洋研究所の概要説明をする新野所長
大気海洋研究所の概要説明をする
新野所長
飼育実験施設について説明する兵頭准教授
飼育実験施設について
説明する兵頭准教授
海洋観測機器の説明をする小畑准教授
海洋観測機器の説明をする小畑准教授


今回の柏キャンパス見学では、世界でも一、二を競うような高精度の実験環境が整えられた広いキャンパス、そしてそれらを駆使し、知の最前線に立って、前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、一日で、まさに、贅沢な「知の冒険」を体験する貴重な機会となりました。

page top