お知らせ
プログラムレポート ~駒場キャンパスでの実験体験(第13期)~
2015年5月11日
EMP第13期では、2015年5月2日に東京大学教養学部がある駒場キャンパスで実験をしました。EMPプログラムの早期に理系の講義にも興味を持っていただけるよう、大学1-2年生がするような実験体験を組み入れています。
実験に先立ち、「『不確かさ』とは-概念としての誤差との違い-」と題して、総合文化研究科 久我隆弘教授にミニ講義をしていただきました。
物理学をはじめとした自然科学研究の第一歩は、現象などの定性的な観察ですが、自然現象の本質を見極め、自然界を統一的に理解するためには、現象を定量的に「測る」ことが必要不可欠です。簡単な実験、測定を体験することで、"測る"ことの基本をまず学び、さらに、その"測った"結果の信頼性を客観的に解釈し、統計学的に評価する手法を学びました。
講義の後は、「不確かさ」を実感するために、実際に放射線を「測って」みるという実験に挑戦しました。
放射線には、α線、β線、γ線などがありますが、それぞれの特徴、特に空気中をどれだけ進むのか、どういった方法で遮蔽できるのかを、霧箱実験で飛跡を観察することにより、体験しました。普通では目にすることができない放射線ですが、飛行機雲のようにランダムに発生する放射線をはっきりととらえることができました。
また、放射線計測では、総合文化研究科准教授、鳥井寿夫先生の指導の下、GM(ガイガー・ミュラー)サーベイメーターを用いて身近な放射線源である塩化カリウムの放射能を測定しました。「測定値は毎回ばらつくこと」、「測定時間が長いほど正確な測定ができること」について、実際に「不確かさ」の計算を行うことによって実感することができました。
2つの実験から、放射線には様々な観測方法があることを学び、また測定には「不確かさ」がつきものであることを体感し、不確かさについての理解を深め、その正しい評価の方法について学びました。
実験の後、久我教授より「『測る』を究める- 単位と標準器、そしてレーザー冷却が拓いた極限計測の世界 -」の講義がありました。
講義では、測定の基準量となる「単位」、それを現示する「標準器」について、そして、国際単位系の基本単位の中で最も小さな相対不確かさで実現されている時間・周波数標準を題材としてとりあげ、その研究最前線についても紹介いただきました。
理論と実験の両輪で発展してきた物理学の理解にあたって、自分で確かめるということ、なんでも客観的に判断することの重要性を体感することができた大変有意義な一日となりました。