お知らせ
プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第15期)~
2016年7月7日
EMP第15期では、7月1日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。
最初に、物性研究所長の瀧川仁教授から、物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、カブリ数物連携宇宙研究機構長の村山斉特任教授より、2007年に文部科学省の事業として設立されたカブリ数物連携宇宙研究機構の設立の経緯と今後の取り組みについて話をしていただきました。
説明の後、カブリ数物連携宇宙研究機構
(カブリIPMU、以下IPMU)移動し、Alessandro Sonnenfeld特任研究員とYue-Lin Sming Tsai特任研究員の案内で施設を見学しました。IPMUは世界から数学、物理学、天文学の優秀な研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
研究者間での活発な議論が行われることを狙い、入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジやテラスなど、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。いつでも議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。
IPMUの施設見学を行った後、物性研究所に戻り、新領域創成科学研究科の雨宮慶幸教授より「ナノ世界を可視化する放射光科学」の講義がありました。
昼食の後、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、秋山英文教授と近藤猛准教授より先端分光実験棟の概要説明をしていただきました。
その後、2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、松田康弘准教授、中村大輔助教、池田暁彦助教の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。現在、1,000テスラの発生に向けた開発も進行中。
次に、金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。
極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
秋山英文教授の研究室では、半導体量子ナノ構造の光物性や、ヘテロ構造・ナノ構造に基づく半導体レーザーや太陽電池のデバイス物理、ホタル生物発光の生物物理などを、レーザー分光・顕微分光・光学計測技術を用いて研究しています。秋山教授の解説により、半導体レーザーなどの見学をしました。
近藤 猛准教授の研究室では、極限レーザーを励起光源とする超高分解能角度分解光電子分光装置の開発および角度分解・スピン分解・時間分解光電子分光で見る超伝導やトポロジカル量子相、放射光を利用した光電子分光で研究する強相関電子系物理について研究しています。近藤准教授の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。
続いて、新領域創成科学研究科基盤科学実験棟の二つの実験室を見学しました。
先端生命科学専攻の三谷啓志教授の研究室では、分子遺伝学や発生工学の技術が適用できるメダカの利点を活用して、分子・細胞レベルの事象が個体レベル、特に生殖細胞突然変異生成にどのように反映されているかを各種突然変異体とトランスジェニックメダカを用いて研究を進めています。三谷教授の案内により、所狭しとメダカの水槽が並ぶラボと、1985年より日本国内外から採集された約80地点の自然野生メダカが系統保存されている屋外飼育場を見学しました。
これらの野生メダカとヒトのゲノム多様性や遺伝子機能の比較に関する解説をいただきました。
先端エネルギー工学専攻 融合デザイン学講座の鈴木宏二郎教授の研究室では、主に宇宙輸送システムや宇宙探査に関する極超音速高エンタルピー(超高速超高温)流体および飛行体システムの研究を行っています。鈴木教授に案内していただいた風洞実験施設では、極超音速(マッハ7~8)と高エンタルピー(気流温度最高約 1000℃)の風洞があり、いかにして高速・高温な空気の流れを作り出すかを丁寧に解説していただきました。
今回の柏キャンパス見学では、知の最前線に立って前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験をすることができた一日でした。