お知らせ
ファミリーイベント ~国立天文台見学会(第8回)~
2016年12月28日
EMPのファミリーイベントとして、12月23日に国立天文台(東京都三鷹市)の見学会を行い、61名(大人41名、子供20名)が参加しました。12月としては暖かな日でした。
国立天文台は、世界最先端の観測施設を擁する日本の天文学のナショナルセンターです。大学共同利用機関として、また、国際協力の窓口として、宇宙の観測・研究・開発を広く推進したり、天文学および関連分野の発展のために活動しています。
緑が多く、静かな構内には、旧石器時代から近世までの複合遺跡もあり、国立天文台の前身である東京天文台の面影を残す大正期の建物も点在しています。参加者は2班に分かれて、それらの建物などを見学しました。
最初に、国立天文台三鷹の中で現存最古の建物で、国の登録有形文化財にも指定されている第一赤道儀室を見学しました。ドーム内にある口径20センチメートルの屈折望遠鏡は1938年から61年間、太陽黒点のスケッチ観測に活躍しました。見学のとき、たまたま雲の間から太陽の光がこの望遠鏡にあたり、投影盤に映った太陽を観察できたことはラッキーでした。
次に、太陽から土星までの距離を140億分の1に縮めて100メートルにした「太陽系ウォーキング」を歩きながら、天文台歴史館に向かいました。惑星パネルには惑星の14億分の1の模型がついていて、太陽の模型から歩いていくと、水星・金星・地球・火星・木星・土星の模型が展示されおり、惑星までの距離やその大きさを体感しながら、太陽系を“体感”することができます。1メートルの太陽と比べると地球の大きさは豆粒大ほどで、太陽の大きさ、太陽系の広大さを改めて実感することができました。
天文台歴史館(大赤道儀室)も国の登録有形文化財に指定されており、地面からの高さ19.5メートル、ドーム直径が14.5メートルもある巨大な建築物です。建設当時、半球ドームを作る技術が施工業者になく、船底を作る技術を持った造船技師の力を借りて作られたそうです。ドーム内にある口径65センチメートル屈折望遠鏡は、日本最大の口径だそうです。このドームには国立天文台が所有している貴重な資料も展示されており、天文・天体観測の歴史について学ぶことができます。
その後、天体や天体現象を空間3次元と時間1次元の4次元で可視化するために開発された、4次元可視化実験システム「4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uドームシアター)」で最新のコンピュータシミュレーションを科学的に忠実に映像化した、迫力のある立体ムービーを鑑賞しました。
4D2Uドームシアターで、宇宙を文字通り「目のあたり」して講義室に戻ると、サンタさんからのクリスマスプレゼントが待っていました。思いがけないプレゼントに子供たちは大喜びでした。
最後に、国立天文台名誉教授、TMT国際天文台評議員会副議長兼日本代表の家正則先生より「超大型望遠鏡TMTで見る宇宙」のお話がありました。TMT(Thirty Meter Telescope:30メートル望遠鏡)プロジェクトとは、口径30メートルという現在活躍しているすばる望遠鏡の10倍以上の面積の主鏡を持つ史上最大の地上望遠鏡計画です。建設地はハワイ・マウナケア山の山頂(標高4200メートル)。日本、米国、カナダ、中国、インドの国際協力によって2014年度に建設をスタートして、2027年度の完成を目指しています。この大きな鏡により、これまでの8メートル級の望遠鏡と比べ、解像力は約4倍、光を集める能力は10倍以上になるそうで、この高い解像度と集光力で太陽系外惑星の探査や宇宙初期の天体の成り立ちの解明など、新しい天文学の研究分野を切り拓くそうです。
難しいお話を小学生でもわかるようにお話いただき、参加者からは日本がすごい望遠鏡を作っていて成果を上げていることを初めて知ると同時に、壮大な宇宙の謎にここまでせまっていることに感動した、という声が聞かれました。
一時曇り空になった空も、帰る頃には西の空に金星が輝いており、国立天文台の敷地内で天体望遠鏡で欠けた金星や、火星、夏の大三角や秋の四辺形などを見て解散となりました。
今回の見学会では、家族といっしょに豊かな自然の中で歴史ある建物や貴重な観測施設を見学し、宇宙への想いを馳せ、家族への素晴らしいクリスマス・サービス・デーとなったことでしょう。