お知らせ
プログラムレポート ~宇宙と「無」:星空観望と坐禅(第15期)~
2016年5月26日
EMPのハイライトの一つである「星空観望会」と「坐禅実修」が2016年5月20日から21日にかけて群馬県で行われました。
5月20日午後3時すぎに貸切りバスで、本郷キャンパスを出発して、午後6時半頃に赤城山中腹の宿(標高約900m)に到着。旅館に着いたときは曇り空でしたが、午後8時頃には幸運にも雲が切れて、月と木星を観望することができました。
法政大学の岡村定矩教授(東京大学名誉教授、前 大学院理学系研究科教授)による解説で、満月の二日前の十三夜月、木星をフジノン大型双眼望遠鏡(富士フイルム製)で見ました。
岡村教授の天空まで届くようなレーザーポインターで指しながら楽しそうに星を説明される姿に引き込まれ、皆、童心に返って星空を見上げていました。特に、大型双眼鏡で木星とその周囲を回るガリレオ衛星が一直線に並んだ様子や、月のクレーターが鮮明に見えたのは大変感動的でした。
屋外での観望のあと、室内で高梨直紘特任准教授による国立天文台が開発した4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka(ミタカ)」を用いたプレゼンテーションがありました。地球から宇宙の果てまでを自由に移動して俯瞰し、最新の研究や観測にもとづいて宇宙の姿を描いた「宇宙図」と併せて見ることで、私たちがどのような世界にいるのか、更に理解が深まったようです。
次の日の公案のテーマのひとつにもなっている土星は遅い時間にならないと見られないということで、午後11時頃、再び外に出ましたが、空は厚い雲に覆われ、残念ながら土星を観ることはできませんでした。再度室内に戻り、Mitakaによって環までくっきり映し出された土星を観ました。土星の環の正体は、非常に数多くの小さな氷の塊で、それが土星の周りを周回して全体として環のように見えるということ。また、こうした土星の環の構造を作り出すメカニズムを解くためのコンピューターシミュレーションを使って、より詳しく土星についての説明がありました。
翌日(5月21日)は朝から五月晴れ。新緑の赤城山をあとに、群馬県桐生市の臨済宗建長寺派宝徳寺に向かいました。真義臨済宗 管長、元臨済宗大本山向嶽寺 僧堂師家・小島岱山老師による「人権」についての提唱、坐禅と公案(禅問答)の実習です。
小島老師との一対一の公案では、予め出された問いに対して、一人ひとり自分の考えを答えるものです。今回も代表的な『無門関』から「無字の公案」の他、「夜空に輝く あの土星を手を使わずに取ってみよ。つかみ取った土星には何と書いてあるか」という問いが出されました。 この公案の実践は、ほとんどの受講生にとって初めての体験で、禅の奥深さと主客一体、不思議な感覚などを体験できた貴重な経験となったようです。
5時間にもおよぶ坐禅実習は、脚の痺れや痛みもありましたが、方丈前の枯山水庭園、ウグイスや小鳥のさえずり、池で戯れる鯉の飛び交う音などに心を癒やされ、「無」を意識する時間を持つことができました。
最先端の知を学ぶ座学から離れ、夜空の下で壮大な宇宙に考えを馳せ、自然との一体感を味わいながら、坐禅や公案を通して自己の小宇宙を探求した2日間でした。