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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第18期)~

2017年12月15日

EMP第18期では、12月8日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所長の瀧川仁教授から、柏キャンパスと物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、Kavli 数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の説明を春山富義Kavli IPMU副機構長/事務部門長よりしていただきました。​

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
物性研究所の概要説明をする瀧川所長
物性研究所の概要説明をする瀧川所長
IPMUの概要説明をする春山副機構長
Kavli IPMUの概要説明をする
春山副機構長

説明の後、Tilman Hartwig特別研究員と広報担当の角林元子学術支援専門職員の案内で、Kavli IPMUの施設を見学しました。Kavli IPMUは世界から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
研究者間での活発な議論が行われることを狙い、入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジやテラスなど、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。いつでも議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

ラウンジで説明するDr. Tilman Hartwig
ラウンジで説明するDr. Tilman Hartwig
Kavli IPMUの建物
Kavli IPMUの建物

施設見学を行った後、物性研究所に戻り、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、秋山英文教授、近藤猛准教授より極限光科学実験棟の概要説明をしていただきました。

2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と極限光科学実験棟を見学しました。 国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、松田康弘准教授、小濱芳允准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。現在、1,000テスラの発生に向けた開発も進行中。

電磁濃縮法のコイルについて説明をする松田准教授
電磁濃縮法のコイルについて
説明をする松田准教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする小濱助教
電磁濃縮超強磁場発生装置の
解説をする小濱准教授

次に、金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。

フライホイール型直流発電機のを説明する金道教授
フライホイール型直流発電機
の説明をする金道教授
マグネットについて解説をする徳永准教授
マグネットについて
解説をする徳永准教授

極限コヒーレント光科学研究センターの極限光科学実験棟は、真空紫外・軟X線レーザーの物性研究利用を主目的とし、光源開発とそれを用いた物性研究を行っています。
秋山英文教授の研究室では、半導体量子ナノ構造の光物性や、ヘテロ構造・ナノ構造に基づく半導体レーザーや太陽電池のデバイス物理、ホタル生物発光の生物物理などを、レーザー分光・顕微分光・光学計測技術を用いて研究しています。秋山教授の解説により、半導体レーザーなどの見学をしました。

近藤 猛准教授の研究室では、極限レーザーを励起光源とする超高分解能角度分解光電子分光装置の開発および角度分解・スピン分解・時間分解光電子分光で見る超伝導やトポロジカル量子相、放射光を利用した光電子分光で研究する強相関電子系物理について研究しています。近藤准教授の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。

半導体レーザーの実験装置について解説する秋山教授
半導体レーザーの実験装置について解説する秋山教授
極限レーザーの研究ついて説明する近藤准教授
極限レーザーの研究ついて説明する近藤准教授


その後、広いキャンパス内を横断してキャンパスの最西端にある大気海洋研究所の見学をしました。同研究所は2010年4月1日、海洋研究所と気候システム研究センターが統合して、新しい名前でスタートしました。気候システム、海洋地球システム、海洋生命システムの三つの研究系と研究連携領域、四つの研究センターがあります。

見学に先立ち、所長の津田敦教授から研究所の概要説明、宮入陽介特任研究員からは加速器質量分析施設の概要について、兵藤晋教授からは海洋生物飼育実験施設の概要についてのミニレクチャーがありました。

ミニレクチャーのあとは、2班に分かれて、兵藤教授の案内で飼育実験施設の見学を行いました。ふ化しかかっているトラザメの卵、シロサケ、ウナギなど、貴重な飼育魚類の水槽が所せましと並んでいました
次に、宮入特任研究員の解説のもと、加速器質量分析施設を見学しました。この装置を使うことによって、火山噴火、地震、気候変動など、過去の地質学的イベントがいつ起きたのかを、高精度で明らかにすることができるそうです。

大気海洋研究所の概要説明をする津田所長
大気海洋研究所の概要説明をする
津田所長
飼育実験施設について説明する兵頭教授
飼育実験施設について
説明する兵藤教授
加速器質量分析施設について説明する宮入特任研究員
加速器質量分析施設について
説明する宮入特任研究員


以上の施設見学を行った後、大気海洋研究所に戻り、羽角博康教授から「気候変動と海洋」と題して講義をしていただきました。

今回の柏キャンパス見学では、世界でも一、二を競うような高精度の実験環境が整えられた広いキャンパス、そしてそれらを駆使し、知の最前線に立って、前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じた一日で、まさに、贅沢な「知の冒険」を体験する貴重な機会となりました。

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